広告会社は変われるか/藤原治
1.広告会社はこのままでいいか-過去形としての広告業
・電通のDNAはスペースを埋めるのが仕事。売るべきスペースに付加価値を施す
・欧米・・・一業種一社制/日本・・・一業種多社制
・コミッションは、広告主から受け取る広告料から相当分を抜いて残りをメディアに返している
・活かしきれなかった転機
・転機その1・・連絡からAE(媒体中心の営業から広告主の宣伝代行へ)
・電通では、クライアント担当は「連絡」という名称で呼ばれていた
・吉田秀雄は、欧米に対しての日本の広告業の前近代性を打破するために、電通でのAE
(アカウント・エグゼクティブ)制の導入を決めた。
・AE制とは、広告主との契約で、広告主企業の一つ、あるいは複数の商品の広告宣伝にかか
わる全計画の立案と実施のすべてを代行する方式
・事業部制を採用したが、広告という特殊分野はこの事業部に完全に配分されず宣伝部に集約
されその主たる業務が媒体と密接に絡んでいたため、連絡係りとしての役割は色濃く残った。
・転機その2・・国際化
・1960年代の国内企業の海外進出に伴い、海外進出の要請があったが、一業種多社制を放棄する
必要があったため、外資系広告企業と提携することで箱を設けたが、結果的に成功しなかった。
・媒体を取り巻く環境の変化
・販売促進は、広告、人的販売、PR(パブリック・リレーションズ)、SP(セールス・プロモーション)の
4つに区分される。このうち、広告が有料であるのに対して、PRは無料である。
・消費者の発展と変貌-大衆から分衆へ、同一志向から個人主義へ
・媒体の発展と変貌-マスメディアからクラスメディアへ(メディアの多様化)
・企業の発展と変貌-少品種大量生産から多品種少量生産へ
2.メディアの変貌
・インターネットの特性=グローバル性、双方向性、制約(時間的/空間的)がない、eコマース
・インターネットは無限。Yahoo!や楽天だけがインターネットではない、PDAやケータイ、家電等
それ自体、今後も拡大し続けていく。
・インターネットとメディアの本格融合へ向けての3つの動き
-地上波のデジタル化(多チャンネル化、高精度画面、双方向性、データ放送等)
-ブロードバンドの普及
-蓄積型テレビ(Tivo等)の登場
・eプラットフォームが登場する(CMGOGOをより広げたようなサービス)
3.広告主の変貌
・インターネットが可能にしたマス・カスタマイゼーション=注文生産ではあるが、大量生産である
・本格的グローバリゼーションの波
-市場としての日本は世界の国々の中の一つ
-市場としては日本が中心
-日本から出て行くことができない
・近い将来、広告会社に突きつけられる課題
・経営企画室に出入りできるか・・従来の広告を含むマーケティングは経営戦略に組み込まれる
・資材部と渡り合えるか・・マスカスタマイゼーションの世界で宣伝部は、コールセンターに代替
されるかもしれない。この手の広告主にとって、広告費は、原材料費と同じ認識かもしれない。
・プロダクト・マネージャーに認められるか・・プロダクト・マネージャーを広告会社の窓口とする
広告会社の窓口とする広告主が誕生する。
4.消費者の変貌
・「マーケティングが効かなくなってきた」=マーケティングは情報が一方通行の時代の概念
・最近の若者は、「コミュニケーションすること」自体が目的になっている
・これからのブームのパターンは、均一的に広がっていくというよりは、各集団毎に広がりを見せていく
5.広告の変貌
・蓄積型テレビの出現による既存のビジネス・スキームの崩壊
1.番組の主導権が視聴者に移る
2.プラムタイムが無意味化する
3.広告が飛ばされる
・ネット広告の進化
・2000年では、バナー広告がネット広告の6割を占めていた(米インターネット広告協議会)のが
2003年では2割強まで下がっている。
・マス広告における変質
-プロダクト・プレイスメント(ドラマ中のCM)、アドバテインメント(CMのドラマ化)
・ネット広告における変質
-新しい場の設営(CGMなど)、双方向性を利用した色々な仕掛、二面性を持つ(リスティング)
・コンテンツの選択が、生活者の手に委ねられる。広告の位置づけが、これまでの企業と媒体の間から
媒体と消費者の間になっていたが、これからは直接、企業と消費者が関係を持てるようになる。
・CRMが重要に・・CRMの成否は、情報の量と質。消費者の個人情報をいかに集積し、分析するか
それが広告会社のレゾンデートル(存在意義)となる。
6.広告会社は変わるか
・戦前の広告業界では、自らに「広告取次」または、「広告取扱」という名称を被せているケースが多い
・戦後になると、上記にかわって、広告業界は自らを「広告代理業」と称するようになってくる
・「広告取次」と「広告代理業」の違いは、前者が「媒体社の代理」、後者は「広告主の代理」を営むということ
・広告会社はアメリカから始まった。新聞社の代理業からスタート(=媒体の代理店)
・それが、広告主の代理業に変わった要因は、フォードの海外進出
・日本の広告会社は代理業を超える法的主体
・法的に代理に代わる、「自己商」という概念を持っている
=広告主が倒産した際、実務上広告会社がその分を被ることが慣行となっている
・現行の広告会社の収入基盤である媒体手数料の考え方も、媒体社から広告会社への報酬ではなく
媒体売買による差額である。
・自己商ゆえに広告主に対する「媒体原価の開示義務はあるか」に関して言うと、「なし」
・欧米の広告業界が、原価開示を受け入れているのは、広告主の代理と法定されているから
・広告主協会が、広告会社を自己商とは認めず、欧米と同じ広告主の代理と思っている節がある
・マスコミ業界は、最後の護送船団方式に守られた業界。金融業界と同様のビックバンが予想される。
・課題は「有限な資源(ヒト:組織論、人事政策/カネ:財務戦略、管理会計)の効率よい配分」
7.広告会社の会計・財務の問題
・コミッション制・・コストパフォーマンスを上げたとしてもそれをもって広告会社の利益が比例して
増大する収益構造にはなっていない
・近年、コミッション制に代わって増えてきているのは、フィー制
・フィー制とは、取り扱い作業に直接携わった労働時間に基づき報酬を算定する方式
-コスト・プラス制=作業にかかった労働時間に、間接費と一定の利益率を上乗せする
-固定フィー制=取り扱い作業にかかる最終的なサービス料を見積もり、作業の開始前に
あらかじめ、一定の報酬額を取り決める。
-ミックス制=媒体購入、制作などにはコミッション制を、広告会社の直接人件費はフィー制を適用
・コミッション制は、企業会計の大前提である、費用収益対応の原則がない
・コミッション制を前提とした広告会社は、基本的に管理会計の発想を採りにくいという構造上の問題を
抱える。経営に必要な管理会計制度がないところに、アメーバ的に組織を増やすという管理不能の
営業行為を是認していた。
・広告主側において広告費は会計学で言う、「費用収益対応の原則」から外れ、間接費扱いにされている
8.広告会社の選択肢
・海外への進出はありえるか
・国内において、自己商として繁栄を謳歌している日本の広告会社が、海外に出た時に欧米のルール
である広告主の代理業の立場に立ち得ないことは火を見るより明らかである。
・日本のグローバル企業は、日本では電通を始めとする国内広告会社を使っているが、海外では
ほとんど日本の広告会社を使っているが、海外ではほとんど日本の広告会社を使っていない。
・一方で、外資系企業は、欧米のルールを適用してくる。
⇒対応策としては、1.外資系の広告会社を買収する、2.外資系の広告会社に出資し
キャピタルゲインを目論む
・広告会社の最終兵器はアド・サーバー。アド・サーバーにより、カスタマイズアドを可能にする。
・広告会社の重点項目は、1.R&D戦略、2.組織論、3.人材育成
・R&D戦略・・・「枠を押さえる」から「仕掛けをつくる」
・組織論・・・今後のメディアセクションは、枠取りのフロー概念から、R&Dセクションに衣替え
営業セクションは、枠を売る立場から、消費者ニーズを完璧に把握して広告主のニーズに応えていく
9.広告会社の経営者論
・トップダウンの改革(アダムスミス的アプローチから、トップ層によるケイインズ的アプローチ)が必要
・かつて、電通を牽引した第三代社長の吉田秀雄は、新聞広告取引の合理化や代理手数料の適正化
民法のラジオ・テレビの開局を主導した。
・第二の吉田秀雄が求められている。



